クロスロード

ベッドの隅に座り、鞄の膝の上に置きながら携帯を探す。

が、鞄の中身は見覚えのない筆箱やノート。

しかもおばさんから貰った婚約祝いが入ってない。


もしかして、これ



「翠君…の?」



よくよく見れば鞄も微妙に違う。

そっか、どっちの部屋にどの荷物が置いてあるか聞いてなかったんだ。

と言うことは、私の鞄は翠君の部屋にある。


――行くか行かないか迷ったけど、無断外泊するわけにもいかない。

それに、間違ってるままにしとくのもかえって変だよね。


……届けに行こう。翠君の鞄。


勢いよくベッドから立ち上がり、テーブルの上に置きっぱなしだったカードキーを握る。

渡したらすぐ帰ってくればいいんだよ。

緊張しなくても、大丈夫だよ。



「……っうん」



ぼそっと小さく吐きだした後、私は廊下に出る。

数メートル離れた翠君の部屋を目指し、ゆっくりと歩き出した。

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