クロスロード

「ごめんね南城さん。香織、南城さんと麻生君がそういう関係だってこと知らないもんで……」


―――教室を出て少し歩いた先にある化学室の前。


真菜には先に部室へ向かってもらい、篠原さんとお話中。



「いえっ、いいんですよ。気にかけてもらっちゃってすみません」

「そんなことないよ。でもいいね、婚約って凄いな」



偶然、こんな風にお話できる時間があった時に篠原さんに伝えた、婚約のこと。

あの時はそうなったばかりで私も全然実感がなかった。


……事実、今も実感がない、けど。



「家とかじゃいつも一緒にいるの?」

「……いえ、最近会話すらしてないです……」

「え!?……あ、喧嘩中?」

「け、喧嘩すらしないというか……」



そういえば言い合いの喧嘩なんてしたことない。


……というか喧嘩できるほど頻繁に会っていないような。


喧嘩できる関係って頻繁に会っているからできるんだよね、と関係ないことを考えてしまう。


そんな時、チラリと篠原さんの首筋から赤い痕が覗く。

ほんのり色づいているソレ。


さっき見た時は吃驚したけど、改めて見るといいなあって。

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