クロスロード
「ああ、資料室の方にいます」
何だかんだで訊いている私。
意外とあっさり彼の居場所は分かった。
男の子にお礼を言って開けられたドアの向こう側を見れば、生徒会長の神崎君とバッチリ目が合ってしまった。
「―――何、渡し物?」
「あっ、いえ、あの……」
神崎君と喋るのは去年の文化祭のキャッチフレーズを提出した時以来だ、と全然関係ないことを考えてしまう。
真っ白になる頭を現実へ戻してくれたのは、神崎君のすぐ傍にいた女の子だった。
「あの!もしかして会長を奪いに来たんですかっ?」
「……え?」
神崎君の腕に抱きついている小柄な女の子。
緩やかに巻かれた髪に大きな瞳。
見たことないから2年生、とかかな。
きっと私を睨むその子に「違いますよ」と柔らかく否定すると。
「よかったー!会長は舞姫(まき)のですから!覚えててくださいね」
「コイツの存在は忘れてくれていいから」
ピシャリと言い放つ忠告。
舞姫、ちゃんはムッと顔を顰めて「何でそーいうこと言うんですか!」と怒ってしまう。
よく分かんないけど……神崎君のことが相当好きなんだろうな。