クロスロード
ヒイイイ!と、顔面も脳内も心中も全て青ざめてしまう。
容赦ない翠君の言葉はまるでナイフ。
弱っていた心にグサリと刺さるソレが、額に薄っすらと冷や汗を流した。
「結論的に言えば、俺にどっかに行けばいいわけ?」
「ち、違う…っ」
そういうことじゃないの。恥ずかしいってだけで、隣にいてほしくないんじゃない。
どうすればうまく伝わるんだろう……
「じゃあ、」
再び考えようとした私の頬に冷たい手が添えられる。
吃驚して視線を上げれば、いつもと変わらない無表情がそこにあった。
「こっち来て」
淡白な言葉に一瞬固まる。
が、ゆっくりと頷き彼の使命通り身体を近づける。
直後、目を閉じる間もなく唇が重なった。
「……っえ、」
解放された唇から真っ先に生まれたのは驚きの声。
だって、だってそうでしょう?
抱きつくのもキスを求めるのも、恋人らしい行為はいつも私から迫っていた。
翠君からしてくれたのは片手で数えられるくらいなのだ。
そんな彼が自分から、なんて、驚くのに相応しい条件。