クロスロード

だから、もっと知りたくなった。

意外と無邪気な反応も、意外とコロコロ変わる表情も。



「5月5日、一緒に過ごしてもらえませんか?」



自分でも驚くほど自然と出てくるコトバ。

おかしいな。自分の意思を伝えるのは得意じゃなかったはずなのに。


それに驚いているのは俺だけではなかった。

美鈴さんは切れ長の二重を大きく見開き、そのまま俺を凝視している。

風が静かに吹き抜けた後、口を割った。



「それ、どういう意味?」



どういう意味、か。

そんなの言った本人だってわからない。


ただ一緒に過ごしてほしいから。彼女を、もっと知りたくなったから。

生憎、頭の中に明確な理由は存在しない。



「意味なんてないです。――でも」



掴んだ腕はそのまま。

ベンチから腰を浮かしてゆっくりと立ち上がる。


元々背の高い彼女は俺とあまり身長が変わらない。

同じくらいの目線、視線を交わらせて軽く笑った。
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