クロスロード
誓いの朝

最初に感じたのは、やけに布団が柔らかいということ。

私の愛用している布団はそれはもう薄い。冬なんて凍えてしまうかと思うほど。


……でもなんか違う。


おまけに敷布団もフカフカ。おかしいな、いつもは寝返り打つのも辛いのに。

次に感じたのは、布団は柔らかくて気持ちいいのに、何故か肌寒いということ。

ブルッと身震いして無意識に身体を包みこむように腕を寄せる。

そして感じた不快感。

……あれ、何でパジャマの感触がしないの?


ここまで来ると呑気に寝ていることもできない。

重たい瞼を勢いよく開き、私は身の回りを見渡した。



「……、」



起き上って見えた世界は、いつも見慣れている自分の部屋とは大違いだった。

高価な置物、絵画。柔らかそうなソファ。何人も寝れそうな大きいベッド。

ここまで見てハッと思い出す。


そうだ、ここ、ホテル。しかもスイートルーム。

彰宏さんが手配してくれた最上階のお部屋だ。

翠君と二人で峰さんのお家に行った帰りで……


寝起きの頭で必死に昨日のことを思い出していると、とたんにカアッと頬が熱くなった。

お、思い出さなくていいことまで思い出した…!

恥ずかしくなってチラ、と視線を逸らせばベッドの下に散らばっている制服。



「――っ!」
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