クロスロード

だ、だ、だから肌寒かったんだ。ってそうだよね。うん、当たり前でしょ、あははは……

もうなにがなんだかわからない。


とりあえずベッドから抜け出して散らばった制服や下着を拾う。

部屋に誰もいないのを良いことに、いつもの倍くらいのスピードで着替えを終わらした。

最後の仕上げにリボンをつけていると、急にバタンとドアの開く音が響く。

音のした方を見れば、少し髪が濡れている翠君がそこに立っていた。



「……」

「……」



しばし、沈黙。

いきなり現れた彼に驚いている私、今日もいつものように無表情の翠君。

何か言ったほうがいいよね、と思いつつ頭の中にコトバが浮かんでこない。

別に着替え途中を見られたわけじゃないし、気まずいわけではないんだけど……



「っえ、ええと、お風呂!お風呂入ってたの?」



気まずいわけでは、ないけど。

どうしても沈黙に耐えきれずに私は勢いよく口を割った。

……こういうパターン多い気がする。



「入ったけど」

「そ、そっか。えー……と、やっぱりアレかな、お風呂も豪華なの?」

「普通」



なんでお風呂の話なんかしてるんだろう…

意識しすぎて何を言ったらいいのかわからない。もう、余裕なさすぎだ。


というか、自分でいうのもなんだけど、私って昼と夜の温度差がありすぎる気がする。

……もちろん気候とかの問題じゃなくて。
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