クロスロード
汚名返上、ってわけじゃないけど。
どうコトバを繋げていいのかイマイチわからずに咄嗟に口にしてしまった。
このまま謝るよりはマシな選択だったかもだけど……明らかに『意味不明』といいたそうな彼の顔。
ああでも、翠君って欲しい物とかあるのかな。
なんとなくだけど物欲なさそうだし、かと言ってもの凄い高級品を言われても困ってしまう。
男の人って何が欲しいかよくわからないな。昔お兄ちゃんにトリートメントあげたら曖昧な笑顔だったし……
「ある」
彼の短い返事にはっとなる。
って、え!欲しい物あったの!?
てっきり否定の返事だと思ってたのに。や、ちゃんとプレゼントは用意するつもりだけど…!
翠君の欲しい物。
不安と期待が胸中をグルグル回る中「欲しい物ってなに?」と、問いかけた。
「返事」
「……返事?」
なんのことだろう。意図があまり、というか全然みえない。
すると彼は再びこっちへ一歩近づいた。
手を伸ばせば触れられる距離にいることに、どくんっと身体が反応する。
「俺が今から言うことに対しての返事」
「え、…それだけでいいの?」
「いい」
そう短く答え、フイに私の左手を握った。