クロスロード

そこであ、と気づく。

さっき貰ったエメラルドの指輪が薬指にはまっていることを。


今から言うこと、ってもしかして。この指輪が関係してる?


さまざまな意見が数秒の内に頭の中を飛び交う。

淡い期待、でもどこかでセーブをかける思考。

そしてゆっくりと、口火を割った。



「今日でお互い18歳だから、」

「……うん」

「ずっとこの日に言おうって決めてたんだけど」



そう言われて浮かんだのは一つのフレーズ。


『左手の薬指の意味は?』


幼い翠君が幼い私に問いかけたコトバ。

その頃の私は何の意味を持つのかわからなかった。

けど今はわかる。特別な意味を持つ指だってこと。


あの後私は翠君に『およめさんに、してください!』とお願いした。

それがどれだけ難しいことかわからず、ただ一緒にいたいという気持ちで。

そんな私に翠君は『……誰かにもらわれなかったらね』なんて、現実味のある返事をくれて。

約束、とお互いの薬指を絡めた。


でも今、は。


約束を結んだその指に、エメラルドの指輪がはめられている。

ねえ、翠君。――ちょっとだけ期待してもいいですか?



「俺は昔から、柚を想う気持ちは変わってない。これからも変わらない」



うん、私も。と声に出さずに呟いた。というより声が出なかった。
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