クロスロード

期待してもいいかな、なんて思っているのに関わらず緊張で身体が震えてしまう。

変なの。怖いことなんて一つもないのにな。



「ずっと一緒にいたいから、だから」



ぎゅっと左手を握る手に力が籠もる。

いつも彼の体温は冷たいのに、今だけはわずかに温かい。

私の体温がいつも以上に高いだけかもしれないけど。


唇を噛みしめて翠君の方を向くと、見たこともない表情の彼がそこにいて。

クッと喉がつまり、心臓が痛くなった。



「3月に高校卒業したら、」



ずっとずっと、幼い頃から翠君だけを見てきた。

どんなことがあっても諦めきれなかった。

きっと私はどこかで、幼い頃の夢を捨て切れていなかったんだ。




「俺と結婚して下さい」




――翠君はいつだって私の心を掴んでしまう。

おかしいな、翠君、言葉で表現するのは苦手なはずなのに。

どうして私が一番欲しかった言葉を、言ってくれるんだろう。


声が出なく反応できなかった私の身体は、いつの間にか溜まっていた涙をぼろっと零した。



「……っ、」

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