クロスロード
ずっとずっとずっと。10年以上想い続けていた人からの言葉。
半年前、翠君が美鈴さんと結婚してしまったら私はどうなるのだろうと思っていた。
いつか結婚できるのかな。翠君じゃない誰かを愛せるのかな。
そんなの絶対に無理だ。婚約者がいても、まだ彼を好きでいる。
だから私はずっとこのままだと思ってた。
誰かにプロポーズされるなんて、一生ないと思ってた。
なのにどうしてかな。
きっと半年前の私が見てたら失神してしまうかもしれない。
されると思ってなかったプロポーズを、一番遠くて一番近い、翠君にしてもらえたのだから。
「……っ、はい」
あ、やばい、声裏返っちゃった。
照れ笑いで誤魔化そうとしたけどそれは無用だった。
私が返事をした瞬間、左手を握ってない方の腕で引き寄せられたから。
肩越しに見えたのは、普段より何倍も空に近い景色。
鮮やかな青空。穏やかな春の風。すぐ近くには愛しい人。
茶色の髪が頬に当たってくすぐったい。
「言っとくけど、取り消しとか無理だから」
「取り消すわけないよ」
もしかして翠君も不安だったのかな。
触れ合った身体から僅かに聞こえる脈拍は、私と同じくらいのスピード。
彼の変化が見れるなんて貴重だからちょっと嬉しい。