クロスロード

唇を離した時の顔の近さに吃驚して思わず目を逸らしてしまう。

その時、フイに目に止まった左手の薬指。

そこにはめられている指輪を見つめていると、あることに気づいて指輪と翠君を交互に見つめた。



「……、」



薬指に輝く緑色の宝石、エメラルド。

宝石言葉は幸運、幸福。そして5月の誕生石。

もしかして誕生石を調べてくれたのかな、と思うと胸がきゅっと詰まって嬉しくなった。



「ねえ、変なこと聞いていい?」

「なに」

「翠君って、いつから私のこと想ってくれてたの?」



一瞬表情が怯む。

でもすぐにいつも通りの無表情になると、さらっと言い放った。



「10年くらい前から」



翠君が言い切ったのと同時。

嬉しさのあまり言葉が出なかった私は、何も言わずに彼に抱きついた。



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