クロスロード
クロスロード
―――……
気づけばサワサワと心地よい秋風が吹き始めていた。
葉っぱは色づいて夏に見かけていた虫たちはいなくなっている。
ああ、そっか。もう秋なんだなあ。
だからこのお花も綺麗に咲いてるんだな。
片手にジョーロを握りしめ、私は小さな花壇を見つめながら笑った。
すると、フイに聞こえてきた誰かの声。
「あれ、もう咲いたんだ」
ザ、と足音を立てて私の隣へ立つ者は。
「毎年秋は秋桜(コスモス)だね。たまには変えないの?」
「いいの。昔からそうなんだから」
鮮やかに咲いた秋桜を眺めて口元を緩ませる。
この花壇は数年前までママが手入れをしていた。
でも私もお花を育ててみたくて、無理を承知でお願いしたところ。
ママはキョトンとした様子もなくあっさり花壇を私に譲ってくれた。
それからというもの、この小さな花壇はママから私へ引き継がれたのだ。
「でも椿(つばき)が花に興味あるなんてね。ほんと意外だよ」
「それ、どういう意味?」
「本家のお嬢様なのに、ってこと」
「そんなの関係ない」
なんて言ってみたものの、隣に立つヤツは特に気にしてないみたいだ。
相変わらずへらっとした笑みを浮かべて花壇を眺めている。
小さい頃からずっと一緒にいるけど、なにを考えているのかイマイチ掴めない。