クロスロード
「そういえば紫音(しおん)、今日帰ってくるの早いんだね。部活は?」
隣のヤツ――紫音に目配せながら問いかける。
格好は私と同じ東高の制服だから学校帰りなのはわかっていた。
「今日は休み。こないだ展覧会の作品完成させたから、お疲れってことで」
「ふーん。紫音の部活ってラクそうだよね。しかも北校舎で活動とか……なんで廃部にならないの?」
「はは、僕部長だから」
「答えになってない!」
いつもそうだ。悔しいけど、結局は紫音のペースに巻き込まれてしまう。
普段私は声を上げたりするほうでもなければ表情もあまり崩さない。
なのにコイツが隣にいるとなぜかこうなってしまう。
それが嫌ってわけじゃない。裏を返せば、紫音には素を出せているってことかもしれないし。
でも悔しい。どこか負けてる気がする。
「あ、そうだ」
フイに紫音は制服のズボンから財布を取り出す。
黒い長財布から抜き出したのは2枚の紙切れ。
なにこれ?と眉を寄せると、薄く笑って私にそれを見せつけた。
「あげる。クラスの友達にもらったんだよね」
そこに印刷されていたのは遊園地のフリーパスだった。
そういえば最近リニューアルしたってことで有名になっている。