クロスロード

「なら椿も来てよ」

「……、」

「遊園地嫌いじゃないよね」

「……じゃなくて。一緒に行ったりしたら怪しまれるよ」

「なんで?僕たち『幼なじみ』でしょ?」



そう。私と紫音は幼なじみ。

生まれた時からずっと一緒に育ってきた。小さい頃の写真は紫音との2ショットばかり。


同じ敷地内に住んでいて同じ学校に通っていて同い年。

これこそまさに『幼なじみ』の王道だろう。


――でも、それだけじゃない。



「行こうよ、椿」



紫音が一歩ずつ私へ近づいてくる。

小さい頃は同じくらいだった身長はあっという間に差が開き、今では頭一つ分以上違う。

黒縁眼鏡の奥の瞳は穏やかだけど、唇の端はわずかにつり上がっていた。



「……行きたいけど、私たちのことバレたら、」

「バレる、ね」



私たちの関係は『幼なじみ』だけではない。それも2年くらい前、から。



ずっと一緒にいた紫音に幼なじみ以上の感情を抱くようになったのはいつからだろう。

2人きりで遊びに行くことも、お互いの部屋に行くことだって何回もあった。

『幼なじみ』だった頃はただ単に一緒にいるとラクだから、という理由で紫音といた。
< 246 / 251 >

この作品をシェア

pagetop