クロスロード
けど、ある日を境に『幼なじみ』の関係は崩れた。
幼なじみだけどそうじゃない。簡潔にいってしまえば男女の関係を築いてしまった、から。
そういうことになってからはどうしてもまわりの視線が気になってしまう。
べつに、敷地内で恋愛禁止などというルールがあるわけじゃない。
でも私は本家の娘で、紫音は分家の跡取り。
今じゃもう殆ど薄れているけど、血だって繋がっているんだ。
そんな紫音との関係がバレたら一緒にいられなくなる。こうやって普通に会話することもできなくなる。
最悪の事態を恐れている私は極力2人でいることを避けてしまうのだ。
……それに。
「紫音、私、お見合いするかもしれない」
「……は?」
ふ、と彼の表情から笑みが消えた。
2人の間を流れる空気も重たいものに変化している。
握りしめたままだったジョーロを地面に置き、花壇に植えてある秋桜を見ながら口を割った。
「こないだのパーティーの時、麻生家に契約を持ちかけた企業があったの。そこの社長が私に目をつけたらしくて」
話した時間は数分だったのに。
そういえば隣に息子っぽい人もいた。確か、私より少し年上みたいだった。