クロスロード

「せっかくいいとこまでいったのに……」


更衣室で着替えをしている最中、さっきから同じことばかり言う真菜。

その度に謝ってはいたけど、そっとしておくのが一番だということに気づき反応をしないでシャツのボタンを閉めていく。



やっと苦手な体育が終わったなあ。

これで授業終わりだし、ホームルームが終わったら部活に直行しよう。

今日は後輩の子が胡麻団子くれるって言ってたし……



「あーあ。柚は今幸せ絶好調かもしれないけど、少しはあたしのことも配慮してよね!」



真菜の声にピタッと止まる手。

幸せ、と言っても……まあ、そうかもしれない、けど。


ていうかそうだと思うんだけど……




「婚約者までいてさ、将来は玉の輿決定だしさ、そりゃあ幸せですよねー」




はあ、と溜め息をつきながら呟いている。

一応周りにいる子に聞こえないよう小さく、だけど。




「どうせご主……ってもうご主人じゃないか。婚約者に毎日愛されてるんでしょ?」




そう言いながらキッと鋭く睨まれてしまう。



……確かに婚約者がいて、しかも一緒の敷地内に住んでいればそう思われるのは普通。



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