クロスロード
その言葉を最後にパタンと閉じる生徒会室。
舞姫ちゃんが笑顔で手を振っているのが目に焼きついた。
……私、どんな風に思われたのかな。
生徒会室を出た瞬間掴まれていた腕を解放される。
もうちょっと掴んでくれててもよかったのに、とまた湧き上がってくる欲望。
だ、だめだよ。この流れは多分一緒に帰ってくれるみたいだから、余計なことは言わないようにしないと。
……って。
私が歩きだすのを待ってくれるはずもなく、既に翠君は数メートル先を歩いている。
ダッシュで追いつき隣を歩く横顔を見上げれば、……いつもの無表情で考えてることなど分からない。
「ね、ねえ、翠君」
「なに」
「……手、繋いでもいいかな」
「嫌だ」
……。
……分かっていたけど、即答って……
やっぱり、漫画やドラマのような甘い展開に進むのは難しい。
ましてや篠原さんのお友達さんみたく、雑誌に投稿できるようなことなど絶対にない。
……あの、翠君。
私達って……どんな関係ですか?
喉元まで込み上げてきた疑問をぐぐっと呑みこむ。
どうやったら恋人っぽくなれるかな。
恋愛経験が豊富以前にちっともない私には難題。
今度女の子向けの雑誌を買おうかな……と、助けを求める方法ばかり考えてしまう。
―――婚約して3ヶ月。
彼と私の関係は、今だに水平線上。