クロスロード
「つーか南城もあるだろ!?こーいうこと!」
ガタンッと椅子から立ち上がった日高君。
一瞬何事かと思ったけどさっきの話の続きだと分かり苦笑いを返した。
「残念ながら無いです」
「……は?…あー、じゃあ家で、ってか」
「家でも無いよ」
私の答えに日高君は眉を寄せて怪訝そうな顔。
『信じられない』と書かれたように見えるのは気のせいじゃない。
喧嘩もしてるみたいだけど、年中仲の良い日高君がそう思うのは無理ないよね。
「え、何?ヤってないのかよ!?」
「こっ、声大きいよ!」
お願いだから自重して……!!
今にも発狂しそうな日高君を椅子に戻させ、私は肩で大きく呼吸。
む、無駄に疲れてきてるような……
当の日高君は顎に指を絡ませて顔を顰める。
普通にしていればかっこいいから、そういう仕草もサマになるなあ。
「南城……たまにはヤらしてやれよ」
「……誘われたことないのに、どうやって……?」
「は?……って、おい。単刀直入に聞くけどお前の婚約者男か?」
「お、男だよ!」