クロスロード
まさか性別を聞かれるとは思わなかった。
日高君の基準とは大分違うと思われる私達の現状。
今までもの凄く変、までとは自覚していなかったけど、こう言われてしまうと焦ってしまう。
「そーだよな……じゃあ何でだ?女恐怖症?」
「そんなんじゃないと思うよ……」
恐怖症だったら婚約前日の夜みたいなこと、ないはずだし……
日高君の発想は私の想像を遥かに越えていてついていくのがやっと。
何だろう。黙ってればかっこいいなあとは思うんだけど、会話が入ると何とも言えない。
呆然とする私を余所に未だ考えている日高君。
とりあえず思考回路を止めさせよう、と声をかけようとしたその時。
「ここにいたんだ、飛鳥(あすか)」
開けっぱなしだった教室のドアから透き通る声。
え、と思い顔をそっちへ向けると、如何にも不健康そうな人が立っている。
癖のない黒髪は前髪が目にかかるほど長いし、肌は青白い。
……制服を着てるから病人じゃないと思うけど、た、倒れそうだなあこの人……
「陽向(ひなた)?何してんだよ」
日高君はガタッと椅子から立ち上がって陽向、と呼ばれた人の傍へ行こうとする。
が、私の方を振り返りニヤッと口元を歪ませた。