クロスロード
「あ、あの……もしかして篠原さんの彼氏さん…ですか?」
「え?」
さっきとは違う、ポカンとした表情で私の方を振り向いた。
長い前髪のせいでよく見えないけど、黒目がちの切れ長の瞳が綺麗。
フイをつかれたのか何も喋らない彼に、急いで言葉をつけ足す。
「いきなりごめんなさい。えっと……篠原さん、学校に彼氏いるみたいだったから……」
『無気力』がキーワードの彼氏さん。
しかも彼氏さんの情報は大体日高君から教えてもらっていたから、いざ本人を見ると変な感じがする。
……無気力って言葉、凄くピッタリくるなあと思ったことは私だけの秘密。
「そう、コイツ。千里の彼氏」
答えたのは彼氏さんではなく日高君だった。
引きずられるのを阻止してくれたのが嬉しかったのか、華麗なスマイルをプレゼントされた。
どうしたらいいのか分からないけどとりあえず受け取っておこう……
「千里の友達?」
「っはい、一応……南城って言います」
軽い会釈のつもりで頭を下げると、降ってきたのは穏やかな声色。
「咲乃(さくの)です」
頭を元の状態に戻して至近距離で咲乃君を見ると、緩やかに笑ってくれていて。
なんとなく、篠原さんと雰囲気が似てるなあって感じた。