クロスロード
でもね、真菜。
そんな普通が私と彼の間にはないんです。
私が浮かない顔をしたのに気づいたのか、真菜はいつもの表情に戻って「どうしたの?」と訊ねてくれた。
「あの……真菜が思ってるようなこと、一切ないよ?」
途端に硬まる真菜。口をポカンと開いて、髪をとかしていた手を止める。
そして小さく
「……嘘でしょ?」
なんて言われたけど、悲しくもこれが現実。
―――婚約をして3ヶ月。
既に4月の下旬に差し掛かり、ゴールデンウィークを目の前に控えた春。
無事3年に進級でき、最後の高校生活を順調に送って、いる。
クラス替えはないから去年とクラスは同じ。
平凡すぎる毎日を過ごしていく中、刺激的なことは何一つない。
婚約したからと言って、特に変わったことはなかった。
学校で話すこともないし、頻繁に本家に行くわけでもない。
……実際、婚約者っぽいことなんて、何も――……