クロスロード

あれ……彰宏さん帰ってくるまでお話したかったんだけど……


暇つぶしになるのを持ってくればよかったかな。でも翠君はゲームとかしなそうだし……

チラリと見た文庫本は難しそうなタイトル。

紙の擦れる音が、静寂に包まれたこの部屋に流れる。


「その本、面白い?」

「普通」


そう答える時も文庫本に釘付け。

細かい字がたくさん並んでるそれは、見てるだけで勉強してる気分になってくる。


読んでる文庫本を見たくて頭を翠君側に持っていけば、コツン、と頭と肩がぶつかった。



……いつもならすぐに頭を離すけど今日は違う。



よく電車の中で恋人がしてるような体勢で、頭を肩に預けたままにしとく。

どういう反応されるかなって、期待と不安を抱きながら。


数分後、彼が私にくれた言葉は。



「寝るなら自分の部屋帰って」


< 47 / 251 >

この作品をシェア

pagetop