クロスロード
あれ……彰宏さん帰ってくるまでお話したかったんだけど……
暇つぶしになるのを持ってくればよかったかな。でも翠君はゲームとかしなそうだし……
チラリと見た文庫本は難しそうなタイトル。
紙の擦れる音が、静寂に包まれたこの部屋に流れる。
「その本、面白い?」
「普通」
そう答える時も文庫本に釘付け。
細かい字がたくさん並んでるそれは、見てるだけで勉強してる気分になってくる。
読んでる文庫本を見たくて頭を翠君側に持っていけば、コツン、と頭と肩がぶつかった。
……いつもならすぐに頭を離すけど今日は違う。
よく電車の中で恋人がしてるような体勢で、頭を肩に預けたままにしとく。
どういう反応されるかなって、期待と不安を抱きながら。
数分後、彼が私にくれた言葉は。
「寝るなら自分の部屋帰って」