クロスロード

ぼそっと、それはもう無意識に吐きだしていた。

あーちゃんは柚からも相談されてたはずだし、既に知っていることだと確信していたから。


しかし、僕の予感は綺麗に外れていた。



「こ、婚約者って柳澤美鈴だったのかよ!?」

「え、知らなかった?」

「知らねーよ!てことは、麻生はあの美女より南城を選んだってことか……」



多少失礼を感じる言葉は置いといて、一人で感心しているあーちゃん。


選んだ、か。

確かにそうだ。美鈴さんではなく柚を選んだ。


でも、どうして翠がその選択をしたのか分からない。


別に不満があるわけじゃないけど、そういう素振りを一瞬も見せたことがなかったから、少なからず驚いた。

てっきり柚から動くと思っていたのに。



「つか、何か変じゃね?」



じとっとした視線を僕に送りつけられる。


あー、もう。ほっといてほしいのに。

そんな空気は一ミリもよまず、あーちゃんは思ったことをそのまま口にした。
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