クロスロード
「何で麻生の元婚約者と碧が一緒にいたんだよ?」
「……たまたま会っただけだよ。ひーちゃんが見たのはその場面だと思うし」
「へー……碧って、南城以外の女とも関わりあるんだな」
どういう意味、と聞き返したかったけど、寸前のところで言葉を紡ぐ。
そう思われるのは仕方ないんだ。
柚以外と極力関わるのを避けていたのを、きっとあーちゃんは察知している。
他の人なんて興味なかったし、些細な会話すら面倒だった。
振り返ってみると、確かに僕と美鈴さんが一緒にいたのは不自然だったかもしれない。
「なあ、お前って、」
―――びりっ、ガッシャン
あーちゃんが何か言いかけた直後、急に響いた激しい音。
何かが破れた音……落ちた音。
そして「みっ、実穂ちゃん!落ちついて!!」と、せーちゃんの慌てた声が聞こえてくる。
……。
チラリとあーちゃんを見れば、青ざめた顔をして唇の端を上げていた。
「早く仲直りして!!」
無理矢理教室から追い出してピシャリとドアを閉めた。