クロスロード

これじゃあ本当に部活が崩壊する。北校舎自体危ないかもしれない。

ただでさえ昨日のことでモヤモヤしてるのに……

無意識にはあ、と吐きだした溜め息。


「碧」


ぎゅっと深く目を閉じた奥、透き通る声が鼓膜に響く。

返事もせず黙り続けていた僕に、更なる言葉を降り注いだ。


「余計なこと言って、ごめん」

「……え?いや、別に」


思いがけない謝罪に目を開け、机に座ったままのひーちゃんを見た。

相変わらず無気力そうだけど、僕ではないどこかを見つめながら静かに呟く。



「でも、あの人と一緒にいた時、楽しそうだったよ」



人が一番分かっているのは自分で

一番分からないのも、案外自分だったりする。


ほら、今だって

ひーちゃんの言葉に動揺して動けない僕が存在するんだ。



「……、」



感じたことのない、触れたら壊れそうな生まれたての想いが身体を隅々まで支配する。

そんな感情を引き剥がすかのように、メールの受信音が大きく鳴った。


新着メール、1通。

送信者の名前を見た時、どくんっと心臓が反応した。



『今週の金曜日、空いてる?』



差出人は、たった今注目の的になっていたヒト。



絵文字一つもない、簡潔な文章が

僕の中の何かを変えた、ような気がした。

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