クロスロード
やさしい言葉
「ねえ、ちょっと……今度はどうしたの」
部活中、体育座りをして防ぎこむ私に、真菜が苦笑いを浮かべながら覗きこむ。
休み明けの月曜日はただでさえ憂鬱。
けど、昨日見てはいけないような現場を見てしまってからは
憂鬱どころか学校へ行く気力も無くなるほどだ。
案の定、朝起きることすら嫌になってしまったくらい。
……それほどダメージが大きかったのかな。
「アンタのまわりだけ暗黒オーラ出てるよ」
「……うん」
例の現場を見た直後、碧君に半強引に家に帰らされた。
私の気持ちを察してか、何も追求はしてこなくて。
碧君と別れてからは部屋に閉じこもり、気づいた時はもう、辺りは真っ暗に染まっていた。
自分でも分かる。
私の生活リズムは翠君中心で、彼のことばかり考えているってこと。
こんなんじゃいつか愛想尽かされる――
絶えず不安が溢れ出る自分が嫌なのに、止められない。
どうして女の子と一緒にいたの?
あの子は、翠君とどういう関係なの?
「ほら、柚の好きな牡丹餅あるよ」
……真菜、気遣わせてごめんね。
心の中で謝り、目の前に差し出された牡丹餅へと手を伸ばす。