クロスロード
「何よ!千里は読まないわけ!?」
「読むわけないじゃん!こんな変態日記みたいなの」
ピシャリと毒を吐く篠原さんに香織さんは不服そうな顔をした。
た、助かった……っ
見慣れない単語だらけの記事は少しだけ読んだけど、絶対ついていけない内容だったから。
でも香織さん以外にも投稿者は沢山。
篠原さんが香織さんに雑誌を返している時表紙が見えたけど、あれは私世代が読むティーン雑誌だった。
だからイコール、投稿者は私と同い年くらいの人。
……刺激が強すぎて、倒れちゃいそうだ。
「変態はどっちよー?千里ー」
香織さんへめげずに挑発をかける。
「は?」とキレ気味の篠原さんの髪に手をかけると、勢いよくそれを持ち上げた。
ハラリと舞う茶色の髪。
白い首筋が見えたと思えば、そこに不自然な赤がほんのり色づいている。
「やっ、やめてよ!」
「ほら見てお友達ちゃん!こっちだってヤることヤってんのにねー?」
―――その言葉のお陰で一瞬に理解してしまう。
赤い痕って、つまり、キスマーク?
細い首筋に赤く刻まれたそれを、篠原さんはバッと手で覆い隠す。
……。
……や、やっぱり普通はそういうことする、んだよね……