クロスロード
ふたりきり

早く来てほしい日ほど来なくて

来てほしくない日ほど、早く来たりするもので。

行きたくないのか行きたいのか分からない日も、ある意味後者の分類に入るのかもしれない。


――5月1日、金曜日


4月は走るように過ぎていき、気づけば5月やって来た。

1年で一番ぼんやりしてしまう時期、所謂五月病の月。



『じゃあ二人とも、金曜日はよろしくね』



彰宏さんからお願いされたのはつい昨日のことのように思えるのに。

どうしてこんなに早く金曜日が訪れているのだろう。

わなわなと携帯を持つ手が震える。ハタから見れば怪しい者以外の何でもない。

そんな私を察してか、真菜は何も突っ込んでこなかった。


「おーい、携帯握りしめて何見てんだよ?」


が、彼だけはそんな空気をよめなかったみたい。

がっと首を斜め上に傾けると、金に近い茶色の髪の毛が揺れていた。



「手出してこないチキンな男には嫌気がさして出会い系?」



くくっと喉を鳴らして笑う姿に何も言えない。

黙っていればかっこいいのに……と何回思ったかな。
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