【短編】不器用彼女
「貴……またネクタイ緩すぎ」
ふいに気になった緩々のネクタイを指摘すると、貴は微笑みながらあたしの身長に合わせて屈んだ。
……直せって???
あたしは大きく溜息をついて仕方なく貴のネクタイに手を添えた。
シュ。
ネクタイを少しきつくすると、貴はニコッと笑った。
「ありがと」
無防備に笑ってみせる貴を見て思わず顔を赤くする。
照れ隠しに、あたしは赤渕眼鏡の渕をくいっと上げて視線を逸らす。
少しだらしない所とか。
そういうのも、この無防備な笑顔で許してしまうあたしって……貴に甘すぎるのかな。
そう思ってしまう今日この頃。