【短編】不器用彼女
馬鹿貴……離れてとか言えない訳?
どんだけ、お人好しなのよ。
睨みながらそう思うあたしだけど、口では言えない。
はぁ……大きく溜息をついて、あたしは棚に本を置いた。
最近……優しすぎる貴が、ムカつく。
そう思っていると、後ろから声をかけられた。
「千田さん……」
声をかけてきたのは、確か……隣のクラスの人。
キョトンとしていると、言いづらそうに彼は言った。
「ちょっと話があるんだけど……いいかな」
あたしはその瞬間、チラッと貴を見た。
相変わらず、彼女でもない女の子と話している。
その姿を見て、ムッとする。
馬鹿。
そう思いながら笑顔を作って返事を返した。