【短編】不器用彼女
「困る……和泉チャンが居なくなったら、俺」
貴がまだ言い終る前に、あたしは初めて自分からキスした。
そっと触れるだけのキスだけど、あたしの心臓は大きく脈を打つ。
そのリズムがすごく心地いい。
驚いたように目を大きくする貴を見つめながらフッと笑った。
「居なくならないよ。……あたしはずっと貴の隣に居る」
女子と話したっていい。
それは貴の性格だから。
特別なのはあたしだけなんだよね?
フッと笑って、夕日に染まる貴の髪を撫でた。
すると貴はあたしを優しく引き寄せた。すっぽりと納まるあたしを貴はギュッと抱きしめた。
「大好き」
あたしを抱きしめて照れながら、そう言う貴にあたしは冷たく答える。