【短編】不器用彼女
「知ってる。貴、心臓バクバク」
そう言って貴の胸に手を当てる。
すると貴は赤い顔して視線をそらしながら口を開いた。
「しょうがないじゃん」
膨れっ面でそう言う貴を見て、あたしはニコッと笑った。
「馬鹿……」
小さく呟いて、あたしは貴に抱きついた。
思っていたより貴の背中が広く感じた。
温もりが……こんなにも愛しいことも分かった。
それはきっと……ううん。貴が好きだからなんだよね。
ずっと笑顔で、おっとりしてて、たまにムカつくけど。
ヤキモチ妬いてくれるとことか、少し子供っぽいところとか。
あたししか知らない貴が大好きで。
馬鹿でもいい。
優しい貴に恋したんだから。
……大好きだよ。