【短編】五月蝿い子
今にも泣きそうな顔を見て俺はギョッとした。
「だから泣くなよ!そういうつもりで言ったんじゃねぇんだから」
「ごめんなさいっ……」
慌てながらそう言うと、俺は溜め息をついた。
必死になって涙を拭っている相武を見つめて俺は気付かされた。
よく見たら、相武って可愛いんだな。
髪なんか柔らかそうだし。
目も大きいし。
まつ毛長いし。
肩なんか華奢だし。
俺……五月蝿いって言ってばっかで、こいつの事ちゃんと見てなかったんだな。
そう思うと溜め息が出た。
そして泣いている相武の涙を指で掬って俺は口を開いた。
「俺さ……」