【短編】五月蝿い子
「待ってよ歌唄~、あ」
その声が自分で大きいと気付いたらしく、相武は口を自分で塞いでゆっくりと歩き出した。
そして扉も大袈裟なくらいに物音を立てないように閉めて去って行った。
その姿を見てまた溜息。
……はぁ。
よくあんな鈍臭くて、泣き虫な奴相手に出来るよな。
歌唄は。
最近そう思う。
まぁ……あんだけ寛大じゃないと、相武を相手になんて出来ないんだろうけど。
何て思いながら俺は本を手に取った。