【短編】五月蝿い子
苛々の理由*Akiya
教室を出ると、丁度隣のクラスから友達の貴が出て来た。
「あ、明弥!」
大声で俺の名前を呼んで貴は手を振りながら近づいて来た。
「どうしたの?もしかして次の授業サボり?」
そう言ってニコッと微笑む。
その笑顔は俺の意味の分からない苛々を消していった。
こいつみたいに……優しく笑えたら。
こいつみたいに……優しい言葉をかけられたら。
こいつみたいに……場を和ませられるくらい大人だったら。
あいつを怖がらせる事もなかったのかな。
不意に相武の顔が脳裏に浮かんだ。
ボーっと考え込んでいると、貴は俺の顔を覗き込んできた。
「明弥……?」
「あ……」