音の無い世界で



『どう?』


携帯のメール画面に打ち込んだ文字を、彼女に見せた。


「すごい上手だね!びっくりしちゃった」


にっこりと笑う彼女。


携帯に、新たに文字を打つ。


『音に上手とか下手とか、あるんだね』


その画面を見た彼女は、きょとんとして僕を見た。


「自分で聞いてて、上手いと思わないの?」


彼女は気付いていないみたいだ。


僕の耳が聞こえないことに。


『生まれつき、音が聞こえないんだ』


「……え?」


彼女は口をポカンと開いたまま、僕を見つめた。


「……」


彼女の戸惑いが感じられる。


彼女もまた、


僕の前から去ってしまうのだろうか。



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