ファーストキスは蜜の味。-ver.Ⅱ-

――…パチパチパチッ


雨の音が鳴るように、大きな拍手の音が響いた。

ぼんやりしてたあたしは、その音でようやく現実に気づいた。




ショーが終わり、出演者全員が舞台の上に立ってお辞儀をしている。


その中には、当然澄香さんの姿もあった。



まわりのキレイな人にも負けないほど、威風堂々と立つ澄香さん。




「……キレイ、だね」

誰にいうでもなく、小さく呟いた。

ただ素直に、キレイだと思ったから。





だから――…

「そうだな」

恭兄の同意の言葉が、なによりも痛かった。


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