ファーストキスは蜜の味。-ver.Ⅱ-
あたしと恭兄は、舞台挨拶を聞くと、すぐに会場をあとにした。
道が混んだら困るからさ。
いまはイイコに待ってた、黒塗りセダンでひと休み中。
「ほらよ」
「……ん、ありがと」
差し出されたのは、ミルクティー。
やっぱりあたしには、甘いものを選んでくれる。
もちろん恭兄はブラックコーヒーの缶を口にしてる。
「うまいか?」
「……まだ飲んでない」
普段と違って、そわそわとしてる恭兄。
気づかう優しさが、余計にあたしの心を苦しめるとも知らずに……。