アリスとウサギ
アリスとウサギ
1.例えば名前が
例えば珍しい名前の人に出会ったとき。
名前が珍しいというだけで、その人の何もかもが特別に見えたりする。
この女はずっと、そういう目で見られてきた。
有栖川奈々子(ありすがわ ななこ)。
昔からあだ名はアリス。
インパクトのある名前のイメージは、見た目や性格以上に人に根付くようだ。
だからみんなにすぐ覚えてもらえる。
それは利点かもしれない。
一方で、目立てば悪い噂もすぐに流れる。
あることないこと。
いや、「あること」に毛が生えて、もはや「ないこと」になったりとか。
これが欠点。
だからこの女は、良くも悪くもできるだけ目立たないように努めていた。
普通に、普通に……と。
そんなアリスは、何の因果か……「ウサギ」に恋をすることになる。
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