アリスとウサギ



「カンパーイ」

 ジョッキやグラスをぶつけ合う下品な音が響き、会が始まった。

 10人のメンバーのうち、ここに参加したのは7名。

 自分とウサギを含め、そのうちの5人は名前も顔も知っている人だ。

「アリス、今日は髪巻いてんじゃん」

「ちがうよ。パーマかけたの。毎日巻くの、面倒だし」

 必然的に女子は女子、男子は男子で固まって座ってしまうのが人の常だ。

「奈々子ちゃんていうんだー」

「ちがうよ、アリス。有栖川だから、アリスって呼ばれてるの」

「へぇ、俺もアリスって呼んでいい?」

「うん」

 一通り同性と話した後、異性とも打ち解けていく……という決まりきった流れを辿る飲み会。

 座席が入り乱れたところで、アリスは一歩もそこを動かないウサギへと、徐々に近づいていった。

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