アリスとウサギ

 そう言ってアリスを後ろから抱いて、髪の毛に口付ける。

「やめてよっ!」

 アリスは彼の腕を掴んで引き離そうとした。

 しかし手に力を込めれば込めるほど腕の締め付けも増す。

「店持ってたことも、黙っててごめんな」

「だから、そうじゃないでしょ」

「じゃあやっぱり寝てる間にベッド……」

「キャー! もういい! 何も言わないで!」

 みんなの前なのに、何て恥ずかしいことを言うんだろう。

 早苗ですら呆れたように口を開けているし。

「今日は送るから、残ってろよ」

 と言ってカウンターに戻っていった。

 アリスは眉間にしわを寄せてグラスのオレンジジュースをグビグヒと飲んだ。

 その後は直人と気まずくぎこちない会話をして、午前2時に二次会はお開きに。

 アリスは会計をしている間にでも逃げ出そうと試みる。

 しかし……

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