アリスとウサギ
アヤは意外そうな顔をした。
「そうなの? 私には大事にされてるようにしか……」
「されてませんよ、大事になんて。その上、忘れることさえ許してくれないみたいだし」
アヤはふーんと頷いてクスクス笑い始めた。
アリスは若干涙目になっているというのに、彼女は笑う。
笑われる覚えなんてないのだが……。
やっぱりウサギに似ている。
いや、ウサギがアヤに似ているのだ。
それほど彼女は、ウサギに影響力があったということ。
アリスは切なくなり、カウンターの椅子を降りた。
「帰ります」
「啓介は?」
「待ちません。一人で帰れますから」
「そう」
「ごちそうさまでした。失礼します」
アヤは笑顔のまま、意外な言葉を発した。
「啓介と奈々子ちゃんって、よく似てるのね」