アリスとウサギ

 ネオン通りを抜けたところにタクシーが停まっていたが、自分の足を信じて歩くことにした。

 コツコツコツコツ

 頭に浮かぶのは、ウサギが走ってアリスを追いかけてくる妄想。

 この期待癖はいつになったら治るのか。

 期待するくらいなら黙って帰らなきゃいいのに。

 あのままバーに残っていれば、彼は必ず迎えに来てくれたのだから。

 アリスはバッグを肩に掛け直して歩みを速めた。

 携帯が震えたのを感じて取り出すと、ウサギではなく直人だ。

 今は返信をせずにバッグへ収める。

 ウサギからの着信を期待した自分が情けなくなって、じわり悔し涙が滲んだ。



 結局ウサギからは何の連絡も来ない。

 期待はいつも裏切られてばかりだ。






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