アリスとウサギ

「ちょっと、ウサギ?」

 アリスは慌てて様子をうかがう。

「ウサギ!」

 顔を叩いてみても、反応がない。

 ただコピー機のリズミカルな音が聞こえるだけ。

 完全に意識を失っているようだ。

 アリスは自分の頭がキーンと冷えるのを感じた。

「きゅ、救急車!」

 バタバタとバッグを漁り、いつもの場所から携帯を取り出す。

 119

 押そうとするが、指が震えてうまく押すことができない。

 座っているのに、足までが震えている。

 4回目でようやく119に成功したアリスは、あまりの安心感に涙をボロボロと流した。

 何とか場所と現状を伝え、電話を切る。

 救助を待つ間、ボロボロ泣いて、ひたすらウサギを抱きしめた。

 呼吸もある。

 脈もある。

 体も温かい。

 でもこのまま目を覚まさなかったら……。

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