アリスとウサギ

 恋心に再び火が着きそうになった時、早苗の声が頭を巡った。

「だまされちゃダメよ!」

 アリスはそこで我に返る。

 危ない、危ない。

 ホスト野郎に騙されるわけにはいかない。

 もう少しで大金を貢がされるところだった。

「やめてよ」

 眉間にしわを寄せて、摘まれていた髪を彼の指から抜いた。

 ウサギはハハッと笑って素直に髪を返還する。

「あたしを客と間違えないで」

 強気にそう言えば、ウサギは笑いながら首を傾げた。

「客?」

「あんた、ホストか何かなんでしょ?」

 アリスがさっき聞いた会話を根拠にそう突きつけると、彼は顔を上げ、大口を開けて笑い始めてしまった。

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