アリスとウサギ

 あの時を思い出したのか、苦笑いをしたウサギは顎髭に触れた。

「そりゃあお前が起きなかったからだろ」

「叩き起こしたら良かったんじゃないの?」

「さすがの俺も、そこまで鬼畜じゃないって。そんなにやってほしかったの?」

「バッカじゃないの? もういいし!」

 拗ねたアリスを楽しむようにゲラゲラ笑った。

 アリスはツーンとそっぽを向いたまま瓶のプリンをかき込んだ。

 顔を掴まれ無理矢理ウサギの方を向かされると、眉間にしわを寄せてフニフニと指で顔をいじられる。

「うーん」

「なんなのよ」

「俺、お前の笑顔ってほとんど見たことないんだよね」

「嘘……」

「マジだよ。怒ってるか泣いてるかビビってる顔しか見たことない。作り笑いは別ね」

 意識なんてしたことなかったが、確かに怒ったり泣いたりばっかりだったかもしれない。

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