アリスとウサギ
「つーか俺が浮気しないように、ちゃんとお前が相手しろよ」
「何言ってんのよ。足りなかったら自分で何とかしなさい」
「この年で自己発電? 遠まわしに下品なこと言うな、お前」
「そういう意味じゃない!」
アリスの頭の中には、彼氏が出来た喜びよりも不安のほうが大きい。
浮気しないだろうか、というのももちろんある。
昼は大学、夜は仕事。
寝る間も惜しんで倒れるまで働く彼と、いつ会えるというのか。
前途多難だ。
そんなことを考えていたら、ウサギがこんなことを提案してきた。
「とりあえず、俺んちに引っ越してきてね」
「はぁっ?」
突然の同棲宣言に、アリスはこの日一番の声を出す。
一方のウサギは極めて冷静だった。
「だってどう考えても会う暇ねーし」
「そうだけど、今住んでる部屋はどうすんのよ?」
「引き払えば?」