アリスとウサギ

 唖然とするアリスはもう何もコメントができなかった。

「結構サービスしたのになぁ、俺」

 どんなサービスをしたというのか。

 からかっているだけではないか。

 腹立たしさは増し、思ったことはとうとう口から出てきた。

「あんた、バカじゃないの? なんであたしがあんたを好きなのよ」

「バカではないと思うけど。根拠があるし」

「根拠?」

 アリスは自分の行動を思い返す。

 そういえば、いつの間にか凝視していたっけ……。

 根拠とはそれだろうか。

 ウサギは自分のグラスを置いておしぼりで指を拭い、頬杖をついて告げた。

「アリスが徐々に近づいてきた」

「は?」

「徐々に接近の法則ってやつだな」

「そんな法則知らないよ」

「俺が編み出したもん」

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