アリスとウサギ
ウサギは迷うことなくアリスに寄ってくる。
ウサギが近づく度に鼓動は速くなっていった。
「おはよ、アリス」
ハスキーな声はいつもと変わらない。
二人の関係が変わっていないことを象徴しているような気がした。
「もう昼よ」
「俺さっき起きたもん」
言っておにぎりを最後まで口に入れたウサギ。
顔をよく見ると、髭は顎も全て剃られていた。
「は? 昨日何時に寝たのよ?」
「朝の4時過ぎかなぁ。入院中に溜まってた仕事片づけてた」
「病み上がりに無理しないで。また倒れるよ」
「病院で散々眠ったから大丈夫だって」
「先生に言われたでしょ。ちゃんと寝てちゃんと食べろって」
早苗は二人の会話を探るように眺めている。
なかなか関係までは読み取れない会話も区切りが付きそうなとき、ウサギはアリスの目の前で何かをつまみ、ぶら下げた。